母校へ恩返し 〜その2〜

 「格言シリーズ」が続いたので、今回は近況報告がてら、2年前の『母校へ恩返し』 http://f-fit.net/column026.html の続編(?)です。

 自身も20年以上前に所属していた高校サッカー部を、フィジカルコーチとして指導させていただくようになって、今年度で3年目になりました。
 なかなか芳しい競技成績をあげることができておらず、ご支援いただいている学校や保護者、地域の方々、そして何よりも選手本人たちに対して大変申し訳ない限りですが、引き続き彼らが少しでも怪我なく、大好きなサッカーを通じて何かを学ぶことのお手伝いができればと思っています。

 その母校サッカー部ですが、じつは今年度から顧問の先生(=監督)が替わられました。前任の先生が定年退職されたのにともなってのことです。
 4月からいらした新しい先生は、私と同じサッカー部OBの方でした。前任の先生同様にサッカーを愛し、自身も名門と呼ばれる大学サッカー部でプレー経験のある、情熱的な若手指導者です。この先生、なんと最初にお会いした時点で、「伊藤さんには、もちろん引き続きの指導をお願いします!」と力強くおっしゃってくれました。 そうして今年度も、いつもの指導日にいつものフィジカルコーチが来て、いつものように笑えて厳しい(?)トレーニングに取り組む日々となりました。

 部員たちにとってはなんら変わらないことだったと思います。
 しかし、私にとってはこのうえなく嬉しい出来事でした。

 ご存知のとおり、プロスポーツの世界などでは監督が変わればコーチングスタッフも総入れ替え、などというのは当たり前の話です。国を代表するチームですらそうなのです。ましてや県立高校の小さなサッカー部で、保護者会やOB会からのご支援で契約していただいているフィジカルコーチなど、いつクビになってもおかしくありません。私自身、「学校や保護者、地域のご理解あっての立場ですから、クビにするときはお気になさらないでください(笑)」と、なかば本気でいつもお伝えしています。

 にもかかわらず、ましてや監督の交代というわかりやすいタイミングであったのに、愛するわが母校は「引き続きお願いします」と早々に言ってくれたのです。その裏には、新たな先生のご理解はもちろん、前任の先生や保護者会、いつもお世話になっている体育科の先生方の温かく、力強い後押しもあったことは言うまでもありません。

 私たちの職業は、「腕一本で食っている」などと格好のいいことを言えてしまうかもしれません。しかしじつはまったく逆で、こうしてたくさんの手に支えられている立場です。たくさんの人に「君が必要だ」と言ってもらえて、はじめて現場に立つことができる身なのです。それをあらためて実感できた出来事でした。

 誰かに必要とされること。その想いや愛情に、プロとして、人間として少しでも応えること。

 そんな当たり前の、でも大切なことを思い出させてくれた母校に、引き続き少しでもご恩返しできれば、と今年度もグラウンドに立つ日々です。学校が撮影現場となったテレビドラマではありませんが、「弱くても勝てます」と言えるぐらいの結果もついてくるよう(笑)、引き続き頑張ります。