師匠と弟子ごっこ


 「――こんなふうに、壇上の高いところから喋っている人間や、師匠と弟子ごっこをやりたがる人間、格好や口先で自分を大きく見せようとするやつを信用してはダメだ。君たちの一番の師匠であり先生は誰なのか教えてあげよう。――それは患者さんだ」


 最近読んだ小説で、心に響いた台詞です。少々トボけた、けれどとても腕のいい鍼灸師の先生が、渋々引き受けた講演で学生たちにこう告げるシーンがありました。

 心から、「そうだよなあ」と思います。

 言わずもがな、この台詞の「患者さん」を「選手」や「クライアントさん」に置き換えると、我々の仕事にも当てはまりますよね。


 かくいう私も専門学校の講師などさせて頂いていますが、幸い(?)トレーニングの実技クラスということや、そもそもの私のキャラクター(←つまり、威厳や重厚さがない:苦笑)もあって、「先生」や「師匠」というよりは、「いい年こいて一緒にバーベル担いだり走ったりしながら、毎週トレーニングを教えに来るオモロイおっさん」と化している気がします。

 でも、それでいいかな、とも思うのです。

 上から目線で何かをえらそうに語るようなことは、私ごときには出来ません。そのかわり一緒に身体を動かして、汗をかいて、そうして目の前の相手とおなじ目線に立ってみることの大切さを、なんとなく感じてもらえれば。こんなブラック業界(苦笑)に飛び込もうという若者たちが数年後、さらにその先のいつか、担当選手やクライアントさんに、「○○さんの指導はキツいけど、でも楽しいからなんとか続けられます!」と言ってもらえるような、そのささやかな踏み台程度になれればそれで何よりかな、と。

 
 もちろん世の中には、そして自分のまわりにも、本当の意味での「師匠」たりえる立派なトレーニングコーチ、トレーナーさんは多々いらっしゃいます。だからこそ、(私から見て)カッコいい仕事はそうした方々にお任せしたい。そのかわり、冒頭の台詞を借りるならば、

「壇上の高いところから喋っている人間や、師匠と弟子ごっこ、カリスマとアシスタントごっこ、社長と使用人ごっこ、etc……をやりたがる人間や、格好や口先、リア充アピールのSNS(←ほんと、多いですよね:笑)で自分を大きく見せようとするやつを、信用してはダメだ。僕たちの一番の師匠であり先生は、目の前の選手やクライアントさんだ」

と胆に命じる次第です。


 ……なんて、それこそカッコつけたこと言ってますが、学生と一緒にyo-yoテストをやって、「こんなの二度とやりたくない!」と悲鳴をあげたりしている、相変わらずの昨今です(笑)。