誰がフィットネスを殺すのか ①

 過激なタイトルですみません。今回のコラムは読んで字の如く、です。簡単に言えば誰がフィットネス業界を、運動指導の現場を駄目にするのか(してきたのか)を一指導員の視点から、改めて述べてみたいと思います。

 フィットネスクラブであれ公共の体育館であれ、ジムやトレーニング室と呼ばれる場所に足を踏み入れたことのない人はもちろん、トレーニング指導員でもずっと競技選手指導に携わってこられた方などが、話を聞いて驚く現実があります。  

もうお分かりだと思いますが、「ああいう施設のスタッフって、ほとんどが素人のアルバイトですよ」ということです。フィットネスクラブの求人を見ると、「未経験者歓迎」「運動が好きな人」といった文字がいまだに躍り、賃金は¥1000にも満たない時給であることがほとんどです。にも関わらず、パンフレットや見学案内では「ジムでは専門のトレーナーがアドバイスさせて頂きます」と謳っています。このコラムで何度も書いていますが、運動指導者は他人様のお身体に関わらせて頂く専門職なのに、です。厳しい言い方ですが、一歩間違えば詐欺と変わりません。  

 その結果として、ジムの中で一人か二人しかいない、正規のトレーナー教育を受けた社員スタッフに多大な負担がかかり、彼ら・彼女らは退職していきます。フィットネスクラブの離職率の高さは有名です。これでは、どこぞの牛丼チェーンや居酒屋と何ら変わりありません。

 悲しいことですが、フィットネス業界はブラック業界なのです。

 以前、そんなことをぼやいていたら「私はマズローの欲求ピラミッドの考えを大切にしているので」と教えてくれたマネージャーさんがいらっしゃいました(『マズローのピラミッド』ってなんぞや? という方はググッて下さい-笑-。恥ずかしながら、私も知りませんでした)。しかし「ジムにプロのトレーナーがいる」というのは、そんな心理学を持ち出すまでもない、子供でも分かる当たり前の条件です。にも関わらず、それすら守られていない。

 医師免許を持たない者が、白衣を着て診察行為を行っていいのでしょうか? ブラインドタッチすら出来ない人が、パソコンショップでアドバイスをしていいのでしょうか? 「お客さんが離れていくだけだから、それは自己責任だ」という人もいるかもしれません。でも、私はそうは思いません。大げさに言ってしまえば、それは人としての倫理、モラルの問題だとすら感じています。  

 もう一度言います。ジムになんの教育も受けていないような素人を立たせること。  

 これは、罪です。やってはいけないことです。

 前置きだけで長くなってしまいました。

 次回は、その“罪”がいつ頃からはびこってしまったのか、誰がフィットネス業界を殺してきたのかを、歴史と共に振り返ってみたいと思います。