【トレーニング格言シリーズ③】「勝利は選手の手柄、敗北は指導者の責任」

 すっかりコラムの更新が遅くなってしまいました。改めまして、2014年もF Fitness Supportをどうぞ宜しくお願い致します。

 不定期連載中のトレーニング格言シリーズ、今回はスポーツの世界ではご存知の方も多い、『勝利は選手の手柄、敗北は指導者の責任』という大切な大切な一言についてです。

 先日、ある学生トレーナーさんが「(チームを)勝たせます!」やチームが敗北した際には、「ごめんね、勝たせてあげられなくて…」などと言っていたのを耳にしました。

しかし。

厳しい言い方を許して頂ければ、それは指導者としての傲慢ではないかと思います。

 常々お伝えしている通り、我々トレーニングコーチは世間一般からすれば「バーベルの担ぎ方を教えるだけの変な仕事」です。そして、その結果が傷害予防や競技パフォーマンス、日常生活レベル向上へのごくささやかな寄与、ということになります。そうです、こんなことを言ってしまっては身も蓋もありませんが、我々が出来ることはあくまでもささやかなサポートなのです。  

 特に競技スポーツに関しては、〝心・技・体″の言葉が示す通りアスリートとしての健全な心と素晴らしい技術・戦術などがあってこそのより良いパフォーマンスであり、我々が関わる〝体″の部分はそれを支える(だからこそ、心・技・体の順番になっているのだとも思います)一要素に過ぎません。担当させて頂く選手やチームの勝利はもちろん心から喜ばしいことですが、それは心・技・体を一所懸命磨いた選手自身のお手柄であり、栄光です。

 フィットネス指導にしても同様です。例えば目標であるダイエットに成功したクライアントさんがいたとしても、それは自身の身体としっかり向き合い、トレーニングや食事をしっかりコントロールしたご本人の努力こそが最大の要因であることは言うまでもありません。

 間違っても、トレーナーやトレー二ングコーチが安易に「勝たせる」、「目標を達成させてあげられる」と言っていいようなものではないはずです。  

 だからと言って、我々に存在価値や責任がないわけではもちろんありません。むしろその逆で、結果に繋がらなかった時は他のスタッフと同様、大いに責任を感じる立場にあります。なぜならば、たとえそれがささやかなものに過ぎないとしても、時にはきついトレーニングを課して目標達成のお手伝いをさせて頂く専門職、指導者と呼ばれる身だからです。選手やクライアントさんは、我々のスポーツ医科学に関する知識や技術を信じて時間とお金を使い、自らの身体をいじめてくれているのです。これで責任を感じない方がどうかしているとも言えるでしょう。

 大切なのは、

・我々が携わる世界は常に選手やクライアントさんが主役である、ということ
・自分たちは体力という一要素を通じてその目標達成をお手伝いさせて頂くささやかな黒子、単なるサポートスタッフに過ぎない、ということ

を常に意識して謙虚な姿勢を忘れないことではないでしょうか。だからこそ、

『勝利は選手の手柄、敗北は指導者の責任』

という温かくも重い一言を、実績ある指導者の方々ほど口にされるのだと実感しています。
そんな私自身は責任を感じてばかりではありますが……。