コラム:変わる世界

 週に一度だけですが、トレーナーを養成する専門学校で講師をさせて頂いています。少人数のクラスということもあり講義というよりはゼミに近いような形で、「トレーナーの卵」たちになけなしの知識や経験、想いを伝えさせてもらっています。

 彼・彼女らと接していると改めて「優秀だなあ」と思います(あまり褒めると調子に乗るので、面と向かっては言いませんが:笑)。

 機能解剖学やバイオメカニクス、栄養学、プログラム・デザインなどを一所懸命勉強し、少なくともそれらの話を“通訳なし”で問答できる若干19歳、20歳というのはやはり貴重ですし、こちらもなんだか嬉しくなってきます。

 何度も何度もこのコラムで触れてきましたが、フィットネスクラブに行ってもスポーツ医科学とは縁もゆかりもないばかりか、それを学ぼうとすらしないアルバイトがのほほんとジムに立っているのが、この業界の悲しい現状です。

 「もっと動けるようになりたい」、「もっと綺麗になりたい」、「もっともっとスポーツで活躍したい」といったお客様の大切な願いをサポートし、ましてやそれでお金を頂いているにも関わらず、です。

「トレーナーじゃなきゃ駄目なんスか?」
「クイックリフト?ファンクショナルなんとか?そんなの必要ないっスよ。」
フィットネスクラブのチーフ時代、煙草を吸ってこんなことを公言して憚らないアルバイトをさすがに辞めさせようとしたところ、何故か私の方が解雇されたことすらありました(実話です)。

 厳しい言い方かもしれませんが、こうした人間がジムに立っていること、そして立たせていることがトレーナーという仕事やフィットネス業界そのものをスポイルしているのです。プロとしての誇りや責任を持たないスタッフだらけの施設に、一体どんなステータスがあるというのでしょう。そして、そんな場所に一体誰がお金を払いたいと思うでしょう。

 こうした似非トレーナー(と、あえて言います)に比べれば、昨今の「トレーナーの卵」たちは遥かに優秀であり、信頼に値すると感じます。少なくとも、彼ら・彼女らは学ぶ姿勢を持っています。知らなかった知識や技術に触れると、悔しそうに、そして楽しそうに吸収しようとしてくれます。その姿勢こそがトレーナーであり、また、この仕事に携わる者の唯一無二のライセンスと言えるのではないでしょうか。

 嬉しいことに、そうした若者たちが現場に出ることによって最近は少しずつ、ほんの少しずつですが、、似非トレーナーだらけのクラブが減ってきたような気もします。まだまだ時間がかかるでしょうが、それでもこの業界は、大好きなトレーナーの世界は、脈々と受け継がれてきた先輩方の努力や若手世代のエネルギーによって、いい方向へ変わり始めているように見えるのです。

 その末席に連なって、変わり行く先を見てみたい。我ら中堅世代も負けずに、業界をより良くするお手伝いをもっともっとしていきたい。そんな新たなモチベーションをもらいながら、毎週教壇に立たせて頂いています。

 少々早い気もしますが、本年も誠にありがとうございました。年末年始も皆様の素敵なスポーツライフ、フィットネスライフを心より応援しております。