コラム:オリンピックの主役
ロンドンオリンピックが盛り上がっています。多くの日本人選手の活躍に寝不足の方々も多いのではないでしょうか。かく言う自分もそんな一人です。
そのロンドンオリンピックですが、私は極力NHK総合かBS1、もしくはネットのライブストリーミング(があるんですね。本当に便利な時代になりました)で観るようにしています。全ての競技をNHK系列では放送しているというのもありますが、それ以前の問題としてオリンピックとは何の関係もないばかりか、どう考えてもその競技に深い造詣や愛着があるとは思えないタレントを安易に登場させる民放の中継では心から楽しめないからです。
オリンピックに限ったことではありませんが、国際競技会なのかアイドルのコンサートなのか分からないような大会運営や、世界一決定戦のはずがお笑い芸人による失礼極まりないバラエティ番組のようになっているスポーツ中継に、心から苦々しい思いをしているスポーツファンは私だけではないことと思います。
教育家だった近代オリンピックの創始者ピエール・ド・クーベルタン男爵(写真)は、イギリスやアメリカを訪れた際にスポーツを学ぶ若者達の礼儀正しさや立ち居振る舞いに感動し、オリンピック競技会を復活させて今日まで続くフェアプレー精神や生涯スポーツの素晴らしさを説き続けました。「一人の選手の輝かしい記録が、100人の青少年をスポーツに誘う。」とも延べています。
そして、IOC(国際オリンピック委員会)の憲章には現在でも「青少年にスポーツを通じて相互のより良き理解と友好の精神を教育し、それによって、よりよき、より平和な世界の建設に寄与する」と記されています。また、意外かもしれませんがオリンピックはこうした精神に則って、“国別の対抗ではない”ことが明確に規定されています。我々がニュースでよく目にする参加国別のメダル獲得順位などもIOCとしては公式に作成・発表はしていないそうです。
繰り返しますが、主役はあくまでも素晴らしい心・技・体を見せてくれる選手であり、スポーツそのものです。そして、それを次世代へと繋ぐことがオリンピックをはじめスポーツ競技会の大きな目標であり、役割なのです。
確かにロンドン五輪の開会式でも007が女王をエスコートし、Mr.ビーンが観客を笑わせ、ポール・マッカートニーが歌い、セレモニーを大いに盛り上げました。しかし、彼らが試合会場にまで現れてレポーター役を務めたり、中継番組のメインMCをしているなどとは聞いたことがありません。「事件は現場で起きている」からと言って(?)人気刑事役の俳優さんを司会に据えたり、スタジアムに足を運んだこともないようなアイドルさんが突然ブルーのユニフォームを着て「応援団長」などと自称するどこかの国とはエラい違いであり、選手や競技そのものへの深い尊敬の念を感じます。こうした点では、日本はまだまだスポーツ後進国だなあ、と本当に残念な気持になって別のチャンネルを探してしまうのです。
いずれにせよ、この素晴らしいスポーツの祭典はもうしばらく続きます。選手や関係者、そして競技そのものへの尊敬の念をせめて我々観客は持ち続けながら、見事なパフォーマンスを引き続き応援したいと思っています。