何でもアリのトレーニング劇場

 週に一度、高齢者対象の保健医療施設で運動指導を担当させて頂いています。指導対象はそこに通所している要支援レベルのおじいちゃん・おばあちゃん方ですが、以前にもこのコラムで触れたように中高齢者へのフィットネス指導もまた実に難しく、指導する側の方が逆に多くのことを気付かされたり、新たなネタ(?)のヒントをもらったりすることも少なくありません。

 例えば、2~3人でセミパーソナル指導をさせて頂いている80~90代のおばあちゃん達。「90年も生きればもういいわよ~」などと言いつつやたらとお元気なのですが、ちょっと目を離すと手近な椅子に腰掛けて自主休憩していたり、「今日は片脚でのバランスが調子いいな…」とこちらが密かに喜んでいたところ、よく見たら手元の杖に思いっきり頼っていたりと、もはやなんでもアリのマイペース状態です。そこで私もあの手この手をひねり出し、自主休憩し始めたらすかさずチェア・エクササイズで下肢をしっかり動かしてもらったり、「いや~今日は調子いいですね~、素晴らしい…って、思いっきり杖ついてますやん!」と芸人よろしく突っこみながら楽しくやり直してもらうなど、毎回丁々発止の(?)“トレーニング劇場”が展開されています(笑)。

 そんなトレーニングセッションですが、周りの全てを楽しむかのように、余裕を持って何事も受け入れてしまうおじいちゃん・おばあちゃん達の姿勢には本当に頭が下がります。自分より50歳も年下の若造を「センセイ」と呼び、身体の使い方を教わりながら笑顔でそれを継続するというのは並大抵のことではないですし、自分自身が50年後に果たしてそんな高齢者になれるか…というと全く自信がありません。

 もちろんそうした面だけではなく、介護スタッフやメディカルスタッフとの連携や限られた環境でのプログラム作成など、専門領域でも実に多くのことをこの現場では学ばせて頂いています。

「子ども笑うな来た道じゃ、年寄り笑うな行く道じゃ」

 という言葉を痛感させられるおじいちゃん・おばあちゃんとの“トレーニング劇場”。少しでも長生きのお手伝いをさせて頂き、まだまだ沢山のことを教わりたいと思っています。