本気でいこう
プロファイルにもある通り、トレーニング指導員になる以前は演技やダンスといった芸能活動の勉強をさせて頂いていました。自分で言うのもなんですが、そこでもやはり(?)ちょっと変わった“役者の卵”だったようです。
当時、俳優養成所に集う仲間達は映画やテレビドラマ、分かりやすいストーリーの人気劇団に出演している俳優・女優らを目標にレッスンに励んでいる人間がほとんどでした。“スター”に憧れる若者がやはり多かったのです。しかし私はと言えば、80年代の小劇場ブームの頃に大活躍した鴻上尚史さんの『第三舞台』(この度、ついに解散してしまいますね)や野田秀樹さんの『夢 の遊民社』、巨匠・蜷川幸雄さんの演出などが大好きで、なけなしのアルバイト代をはたいて彼らの舞台や上演ビデオばかり見ながら、
「『ウエストサイド物語』なんて、どこが面白いのか分からんぜ! 歌って踊りながら喧嘩するヤンキーなんかいるかっつーの。」(ファンの方、すみません…)。
と身の程知らずな演劇論(?)ばかりぶっていました。その癖、裏ではこっそりシェークスピアやチェーホフの戯曲と格闘するという、なんともひねくれた演劇青年だったのです。
私の演劇論はさておき。
体制派や多数派、誰もがなあなあにしてしまうような世の中の流れのようなものに対して、笑いをまぶしながら軽快に、もしくはケレン味たっぷりに豪快にツッコミを入れるようなスタイルへの憧れや、歴史を紐解き先達の叡智にヒントを求めるようなこうした勉強姿勢というのは、結局、トレーナーとなった今でも なんら変わっていないような気がします。また、その姿勢に助けられることもしばしばです。
『トレーナー』とは名ばかりの志なきアルバイトだらけのフィットネス業界を、笑いのネタにしつつ一介のプロとして胸を張って批判し続けること。今以上に 器材もスペースもない厳しい環境の中、創意工夫しながらトレーニング指導していた偉大な先人達の記録からヒントを頂くこと。
これらトレーニング業界人としてのライフワーク(だと勝手に思っています)の原点は、実は下北沢や荻窪の小さな稽古場で培われていたのかもしれません。 だとすればそれは、少なくともあの頃の自分が“本気”で大好きなことを勉強させてもらったからこそだと思うのです。
身を置く場所が変わっても、憧れの対象が変わっても、何かに対して“本気”であったことの引き出しは、きっとどこかで自分を助けてくれるということなのでしょう。
先日もセミナーで多くの若者たちと触れ合う機会がありました。彼ら若い世代も“本気”で学び、“本気”で遊び、“本気”で10代、20代を謳歌して欲しい。まだまだ未成熟なこの業界を、軽やかに、豪快に、ともに変えていって欲しい。
勿論、30代もまだまだ駆け出し。引き続き、こちらの“本気”も負けませんよ(笑)。